| 白山書房の本紹介 |
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五〇歳になって「残された人生、やりたいことをやろう。今が一番若いのだ。明日より今日が若いのだ」と自分に言い聞かせ、時間を作り、登山を再開した。 [筆者紹介] |
[目次] 1 懐かしい山々へ 白馬岳 10 伊吹山 12 八ヶ岳 14 2 穏やかな高原へ 霧ヶ峰・美ヶ原 18 蓼科山 20 筑波山 22 大台ヶ原 24 3 花に迎えられて 大峰山 28 燧ヶ岳 30 草津白根山 32 平ヶ岳 34 鳥海山 36 早池峰山 38 石鎚山 40 八幡平・岩木山 42 白 山 44 四阿山 46 恵那山 48 4 残雪から新緑へ 常念岳 52 剣 山 54 大 山 56 大菩薩嶺 58 雲取山 60 鳳凰山 62 吾妻山 64 那須岳・磐梯山 66 男体山 69 飯豊山 71 5 山上の楽園を歩く 会津駒ヶ岳 74 苗場山 76 巻機山 78 越後駒ヶ岳 80 至仏山 83 火打山・妙高山 86 朝日岳 90 6 岩峰のある山 金峰山・瑞牆山 94 武尊山 98 岩手山 100 7 お湯の中から山を想う 谷川岳 104 八甲田山 106 雨飾山 108 天城山 110 安達太良山 112 御嶽山 114 両神山 116 浅間山 118 皇海山 120 荒島岳 122 8 夏は北海道の山々へ トムラウシ山・大雪山・十勝岳 126 羅臼岳・斜里岳 131 後方羊蹄山 135 阿寒岳 137 幌尻岳 139 利尻山 141 9 一万尺の稜線を歩く 剱 岳 144 奥穂高岳 147 槍ヶ岳 149 立 山 152 黒部五郎岳・笠ヶ岳 154 薬師岳 158 五竜岳 160 鹿島槍ヶ岳 162 焼岳・乗鞍岳 164 鷲羽岳・水晶岳 167 北 岳 170 間ノ岳 172 甲斐駒ヶ岳・仙丈ヶ岳 174 塩見岳 178 悪沢岳・赤石岳 180 光岳・聖岳 184 木曽駒ヶ岳 189 空木岳 191 10 紅葉から新雪へ 高妻山・194 月山・蔵王山 196 日光白根山 199 甲武信ヶ岳 201 赤城山 203 丹沢山・205 11 冬は南国の山々へ 九重山・阿蘇山・祖母山 208 開聞岳・霧島山 213 宮之浦岳 216 12 最後の山 富士山 220 13 海外の山 憧れのヒマラヤへトレッキング 226 スカイラインハイキング 234 グランドトラバース 237 マッキンリー展望とハイキング 240 百名山を登って 244 あとがき 246 ふたりで登った百名山・年譜 249 名古屋からの主な百名山への行程 253 [本文の抜粋] はじめに「こんなに若かったの」 30年ぶりの山 白馬岳[長野・富山] 昭和六二年八月一〜二日 今も使える山の道具といえは、門田のピッケルと、大学四年の時に特注で作らせた登山靴の二つだけである。久しぶりに山のスポーツ店を覗くと、浦島太郎のようにキョロキョロと驚くものばかりである。棚に並んでいる登山靴の軽いこと、リュックがカラフルで縦長に変身していて、横長のキスリングなどはどこにも見当たらない。 三〇年の時の流れを痛感する。今では大糸南線の信濃四谷という駅名は無く、更に「しろうま」(代馬)でもなく「はくば」(白馬)というらしい。山までハクバダケと呼ぶ若者がいる時代だそうだ。 バスに揺られて猿倉に着くと生憎の雨である。さっそく雨具を着て、馬尻まで多くの登山者にまじり登り始める。なんてこった、三〇年ぶりにやってきた山の初日が雨とは……。昔のポンチョを被った初老の男は、さぞカラフルな雨具の集団の中では異様な存在であったに違いない。 懐かしい大雪渓の前に立つ。三〇年前に見たときは、もっと大きく何か迫ってくるような感じであったが、薄汚れて貧弱になったようだ。 軽アイゼンを娘に付けてやり、雪渓の上に立ち黙々と登り始めるが、すぐに息が切れ、荷物が肩に食い込む。実に情けない。一息入れて、またあえぐ。あえぎながらも気持ちは晴れ晴れとしてくる。大雪渓を一歩一歩踏みしめながら、俺はまた山に戻ってきたのだという想いが沸々と湧いてきて楽しい。しかしなかなか草付が現れない。さすが全長三・五キロの日本三大雪渓であるが、体力の落ちた初老にはつらい。平均三五度の勾配は今となってはかなりきつい。 大雪渓をクリアして、あちらこちらに白や黄色の花が見え始め、白馬のお花畑を通過しているのだが、ゆっくり見る余裕も無い。必死に登り続けながら、ピンクがハクサンフウロ、黄色がキンポウゲ、白がハクサンイチゲなどとぶつぶつ言いながら、連れと娘からかなり遅れて山荘にたどり着く。 翌朝快晴、雲海から朝日が針のように一筋二筋と射す日の出を見た。ご来光に感激である。いい気分で三人揃って山頂を目指し、二九三二メートルの山頂に立つ。今も三角に尖って颯爽とそびえ立つ白馬の頂は美しい。 帰路は白馬大池を眺めながら栂池へ下った。 あとがき 百名山登頂と言っても正確には完登していない。岩手山は不動平から頂上をめざしたが、烈風に戻されてしまった。北海道の羊蹄山も火口壁の上まで這い上がったが強風で小屋に舞い戻った。ふたりで登ったと言っているが筑波山は別々に登っている。三角点を踏んだから登頂したと言うのもさびしいことだ。八幡平も霧ヶ峰も美ヶ原も行っていないところがまだまだある。山域は広く山はなかなか登りつくすことは難しい。登ろうと挑戦して九割方登ったように思っているだけだが、記憶が薄れないうちにと思い、ひとまずここにまとめた。 百名山は登山者が多いからと毛嫌いする方がいるが、やはりいい山が多い。工夫次第で静かな百名山を楽しむこともできる。百名山を目指していた一五年間は充実した年月だったと思う。目標があることはたのしい。いつも自分で目標を作り、それを目指してこれからも生きてゆきたい。今も勤めを持つ身である。休みを最大限活用して山でリフレッシュしたい。毎日が日曜日なら早く登れたと思うが、やりくりして登るのもまた格別であった。 特に日本各地の山を登るため、初めてその村や町を訪れ、様々な方とふれあい、いい思い出をつくることが出来た。その地方の名山に登り、ふもとの温泉に浸り、めずらしい食べ物をいただく、という最高の体験をふたりで共有できたことに感謝している。 連れを連れて山に登っているうちに、いつの間に連れに連れられて登っていることに気づき始めた。人の世の常なのかもしれないと納得するようになってきた。このほうがごく自然のように感じられるようにもなった。ただ、今になって腰痛に苦しんでいるのは最近の生活態度から来るものであろうと反省しているが、まだまだ山行きを続けたいと念じている。 最後になりましたが、白山書房社長兼「山の本」編集長の簑浦登美雄氏には格別なご助言とお力添えをいただきました。厚く感謝申し上げます。 平成一六年 早春 著者 |
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