●本書に掲載した沢
姫川水系 小滝川 西俣沢
青海川水系 金山谷
大平川水系 大滝谷
〃 似虎谷
小川水系 尾安谷
黒部川水系 弥太蔵谷
〃 北又谷
〃 柳又谷
〃 上ノ廊下
〃 源流/赤木沢
常願寺川水系 真川 鳶谷
〃 真川 岩井谷
〃 称名川 ザクロ谷
神通川水系 金木戸川 小倉谷
〃 金木戸川 打込谷
〃 金木戸川 双六谷
犀川水系 高瀬川 北葛沢
〃 高瀬川 ツバメ沢
〃 中房川 白河沢
〃 中房川 曲沢
〃 中房川 白水沢
〃 梓川 ワラビ沢
〃 梓川 産屋沢
●抜粋
北アルプスの沢の特徴
地溝フォッサマグナはその西縁断層崖、糸魚川―静岡構造線と呼ばれる大地質構造線にほぼ沿っており、そのフォッサマグナのまわりには高く険しい山地が生まれ、特にその西側に壁のようにそびえる飛騨、木曽、赤石の三山脈は3千メートル級の峰々を連ねて日本アルプスを構成する。その三大山脈の一つ飛騨山脈を通称北アルプスと言い、最も険しい山地となっている。
その巨大山脈を深く掻爬して奔流、疾走する渓々は自然の摂理の成す彫塑であり、その中心を割って流れる急峻な渓、黒部峡谷を筆頭に険しい渓々を形成するとともにそれぞれの特色を持つ。
遡行適期は概ね7月下旬から9月いっぱいだが、流程の短い支流では6月下旬から10月いっぱいまで遡行が可能である。
水量の豊富な黒部川の柳又谷や北又谷、上ノ廊下、それに双六谷などでは度々の徒渉や稀には泳ぎを強いられるので、天候の判断は慎重を期したい。入渓前の二日間と遡行中の二〜三日間は好天がほしいところで、よってこれらの谷の遡行チャンスは少ない。
また、防寒対策も十分にすべきである。
姫川水系
本書に紹介されてはいないが、白馬岳以北の峰々に馬蹄状にかこまれた大所川は大きな渓で釣りとしても面白い渓である。
小滝川も姫川の一大支流で、東俣沢は沢登りの魅力としては欠けるが、西俣沢の上部は急峻なスラブ状で形成された興味深い沢が数本あり、取り分け本流は狭い沢中に小滝に大滝や連瀑帯と変化に富み登攀力を必要とし、犬ヶ岳の眼下に消える。
青海川では難度の高いアイサワ谷、金山谷が対象となる。金山谷は下部に顕著なゴルジュ帯を形成し、大滝はないもののそのゴルジュ帯の突破は難しく高度な遡行技術とA0程度の人工登攀も要する。中流部では穏やかな顔をみせ、源流部で再び滝を連ねながら白鳥山付近に出る。
(以下略)
●本文抜粋
金木戸川 双六谷
双六谷は神通川水系中で最も長大な谷であり、流程13km中に滝と言える滝は無いが、巨岩とゴーロ、大きな釜で形成され、深く抉られた釜はその水流の行方すら明確でないものも存在する。
谷の遡行グレードは高い方でなく、平水であれば浩蕩とした明るい谷であり、楽しさと爽快さに満ち溢れながら穏やかな源流部へと導びかれることだろう。
しかし増水には凄まじいものがあり、美しい景観を誇っていた巨岩や釜が災いとなることもある。取り分け平静を装った暴れ者と言ったところである。
1日目
今年二度目の双六谷である。8月に入谷したが事故と増水のアクシデントに遭い、中退せざるを得なかった。
金木戸川林道終点に深夜1時半に到着して仮眠に入る。前日までの予報はあまり良くなかったが、朝は何と快晴である。
「おーい起きろよー、いい天気だぜ」
気持ちのいい朝を迎えて6時30分に出発する。林道下の谷は前回とは変わって減水状態である。
初秋の谷間の朝は清々しく、歩行は快調に進み8時30分には広河原を遡行していた。
跳ねあがる流れの分身は朝日に捉えられては光玉となり、彼等の足元にまとわりつき消えてゆく。何の変哲もない光景のようだが、そこには行動と生命感の躍動と沈静、その調和の中にアイデンティティの実感が溢れ、一気呵成にやり遂げようとしている姿勢が伝わってくる。
(以下略)
 
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