本文より抜粋
二〇〇九年七月十四日に温泉宿に泊まって上ホロカメットク山に登る計画を立てた。ところが七月七日午後、マスコミが十勝岳と富良野岳に向かう登山道から約二〇m離れた沢地へ大きな落石があったと報じ、登山者に注意を呼びかけた。安政火口の化物岩の崖から、直径一・三mの岩石三個と土砂が崩れ落ちたのである。
この一帯は一八五七年五月の大爆発で噴出、安政火口と呼ばれ、天然記念物に指定されている。上ホロカメットク山の登山道稜線に化物岩や八ッ手岩があり、頂上直下の火口壁は垂直に切り立って迫力がある。
この山域は登山口に近いため、山岳団体の冬山トレーニングの場となり、一九三八年十二月に二人、最近では八八年十一月に一人、九四年十一月には二人、二〇〇七年十一月に四人が雪崩で遭難死した危険な場所である。
私たち中高年登山者二三人は、登山口の温泉宿を予約してあったので、中止はできない。この登山道から危険な化物岩の下まで行かずに左折し、崖尾根を経て三段山に向かうコースに変更。しかしここも調べてみると一九九二年八月に五八歳の女性が、崖尾根登山中に直径四五cmほどの落石が頭を直撃、病院に収容されたが死亡。ここも危険区域なので中止し、吹上温泉から登ることにした。
ここは古くからスキーコースとして親しまれ、私も一九六二年三月に白銀荘に泊まって、存分にスキーを楽しんだことがある。鬱蒼と繁ったエゾマツやトドマツの美しい樹林帯を抜けると白一色の大斜面。頂上に立つと旧噴火口を隔てて、十勝岳から上ホロカメットク山、富良野岳が脈々として聳え、濛々と吹き上げる噴煙は深い渓に沿って陰影をもたらし、一段と神々しく、感動の展望台であった。滑降はU字型の渓を豪快に転びながら滑り、樹林帯に入ると柔らかな粉雪で、転倒すると身を没し、起きるのに容易ではない。スキーの下手な私には恰好の山で、その魅力に惹かれ数年続けて訪れた。その後、美しかった樹林帯はスキーのコースとして伐採され、ゲレンデ化されたので行っていない。
この山の斜面は緩く三段に分かれているので、三段スロープと呼ばれ、それが山名の由来である。
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