白山書房の本紹介 |
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私も「がん」になりました。しかし私も一人の人間、弱気になることもある。心の支えが欲しかった。だから私は歩いた。体力を維持するためにも。そして仕事に復帰するために、さらには好きな登山がまたできるように。「直腸粘膜下腫瘍」なんてクソクラエ! 歩いた、治った、山も薬だ! 闘病生活の喜怒哀楽を赤裸々に綴ったノンフィクション 【プロフィール】 《勤務先》(株)ジェイアール西日本メンテック 《主な所属クラブ》山の本倶楽部 新ハイキングクラブ関西 《著書》『いちにの山ぽ』(2007年、文芸社ビジュアルアート) |
●目次 検査入院 11 仕事に戻る〜休職 19 投薬治療入院 33 投薬自宅治療 42 直腸粘膜下腫瘍摘出手術と人工肛門造設 73 人工肛門閉鎖手術までの自宅療養 109 人工肛門閉鎖手術 134 排便機能不安定 148 家族登山の記録『いちにの山ぽ』出版 231 仕事復帰 233 資 料 編 検査で署名した「同意書」の主な内容 254 おわりに 298
●本文「山の仲間に逢いに三周ヶ岳へ[福井]」より お父さん、福井まで運転なんて無理やて〜 どうしても行きたいの〜 出来たら一緒に行って来れるか〜 仕方ないなぁ〜 円座クッション買った方がいいよ〜 山仲間に逢いたくて肛門痛を我慢しながら 妻と二人で軽トラで福井へ走ることにした 中学生時代から山を歩いて40年。結婚後は子育てファミリー登山。ガイドブック、山行記など山岳関係の本をよく読んだ。書店の山岳コーナーで、白山書房の季刊誌「山の本」創刊号を見つけ立ち読み。投稿文が多く読みやすい文章。しばらくして山の本倶楽部に入会した。 山の本倶楽部の山行例会は関東方面が多く、やがて関西でも行われるようになった。鈴鹿・綿向山の例会のとき幹事を引き受け、お世話をさせていただいた。 その後、しばらく仕事の関係で日程が重なりご無沙汰していたが、無性に逢いたくなった。仕事に出れば気も張り痛みも紛れるが、自宅にいると気が緩むのか、痛みが増す。福井県の三周ヶ岳山行の例会があり良い機会だ。懐かしい顔を見に行こう! 痛みも紛れるだろう。 10月29日(土) 13時、近江日野名物でっち羊羹と日野菜漬を土産に積み、私が運転するからという妻に「俺が運転する!」。心配顔の妻を助手席に乗せ福井へ向かった。穴あき円座クッションを敷いて運転するが、尻の位置をずらし続けないと振動で痛い。何とか長時間の運転に耐え、福井県坂内村に入り、暗闇の三周ヶ岳登山口に着いた。 「ご無沙汰していま〜す」。明日の登山は無理だが、夜だけの参加を伝え土産を渡す。久し振りの再会に泣きじゃくる茨城の秋田さん、私ももらい泣きでしばらくは会話にならなかった。 「そのマグカップ、ロゴマークが入っていいですねぇ〜」と薮田さんに話しかけたら、「記念にあげるよ!」と「山の本」ロゴ入りマグカップを頂いた。入院する時はこれを使おう。小雨が降ってきたのでテントに入り、つもる話が続く。妻もうち解け、今は山の本倶楽部の臨時会員。 話題はつきないが21時にテントを出る。 「早く病気を治して一緒に山に登ろう!」の言葉に見送られキャンプ地を後にした。暗闇の林道、道幅は狭いがヘツドライトに浮かび上がる紅葉が美しい。山の本倶楽部の仲間との久し振りの出逢い。長くなるであろう闘病生活に心の支えができた。 行きは北陸道だったが、帰路は春日村の峠越えを走り、岐阜県関ヶ原方面に向かう。国道だが対向出来ない狭い山道。峠を過ぎたころ明神の森にさしかかると夜景が美しい。車を停め、夜景を眺めながら「良性でありますように!」と祈っていた。 「お尻どう? なんとか耐えられそう?」 こんな会話を繰り返しながら夜遅く帰宅した。 10月31日(月)から出勤するが、11月3日(木)の夜間、またもや便秘で苦しむ。日野記念病院へ妻に送ってもらうが痛みが治まらない。「とにかく浣腸しましょう」と、当直医師が看護師に指示。 私の場合、大きな腫瘍で便の通り道が非常に狭く、浣腸薬が効くまでしばらく我慢するのがとても辛い。検査入院の時もそうだったが、我慢すると貧血ぎみになる。結局、今日も貧血ぎみになり、浣腸→つらい排便後→点滴、になり入院となった。 翌4日、早朝に一度帰宅して、改めて2回目の検査結果を聞きに行く。天を仰ぎ、といっても廊下の天井だが、一呼吸して外科外来診察室に入る。病理検査の結果は、「良性、悪性と、はっきり判断しかねるグレーゾーンですね」。中村外科医師の言葉を聞いて、「悪性」と伝えられるよりはまず一安心。とりあえず長い間、胸につかえていたものが少しとれたような感じだった。 ほんの少しだが晴れ晴れとした気持ちに久し振りになれた。しかし、そんな気持ちもつかの間だった。 中村医師が、自分で描かれた素人でも理解しやすいイラストを用いて説明される(次頁)。 「腫瘍はほとんどが粘膜に出来るが、伊澤さんの腫瘍は筋層に出来たもので珍しい。病名は直腸粘膜下腫瘍(GIST)。胃の粘膜下腫瘍は聞いた事があるが、直腸はなぁ……」 内視鏡カメラで撮影された腫瘍のフィルムを見てビックリ! 予想はしていたが、これほど大きいとは……、持参したデジタルカメラに収めた。妻に伝えるため、あらかじめカメラは準備しておいた。 続けて中村医師から、 「直腸内部は内視鏡で確認できますが、前立腺の方にも膨らんでいるので、前立腺との位置関係を詳しく調べる必要があります。手術の検討で必要ですから、検査入院のとき骨盤部のMRIをしたのですが、より精度の高いMRI検査を受けてほしいのですが、湖東記念病院で」 「行きましょう」 「日程は後日お知らせします。いずれにしても手術は12月頃の予定と思って下さい」 少し間をおいて、 「先生は外科やさかい、手術の事を考えるが、他に治す方法はないんですか!」 「今のところ手術以外は……」 「たとえば、抗ガン剤のような薬はないんですか?」 「…………」 「…………」 「滋賀医科大に問い合わせてみますが……」 「私は素人で何もわからないが、何か手術以外で良い方法を探して下さい! インターネツトで調べて下さい!」 「とにかく探してみましょう」 「よろしくお願いします!」 帰宅後、写真と腫瘍位置の概念図で妻に説明する。 「とにかく悪性でなく良かったなぁ……ず〜っと心配やったもんなぁ」と妻が静かに応えた。 「手術の結果、人工膀胱・人工肛門やったらそれなりに生きて行くから」と、今日のところは平静さを保ちながら妻に言ったが……。 翌日から新聞記事、新聞折込みチラシを見ながら、「何か良い薬はないものかなぁ、クロレラなぁ、キノコ類で何か良いのがないかなぁ。東洋医学、漢方なぁ、自然療法なぁ、医学書を読むにしても近くの書店には置いてないしなぁ……」 医師に頼りながらも、「腫瘍も体の一部、自分の体、病気症状と正面からつきあってやろう!」という気持ちが芽生えてきた。 11月9日(水)、湖東記念病院で再び腰部MRI検査受診。 翌日18時、中村医師が当直のため、昨日の検査結果を聞きに行く。画像を見ながら、 「前立腺を相当押しているから、人工膀胱も覚悟しておいて下さい。前回説明したとおり、肛門の括約筋にも広がっていますので、相当難しい手術になりそうですね〜」 しばらく顔がこわばる。 以下省略 |